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親指を立て、挨拶しましょう

(日本語 編集協力:  石﨑史子)

この頃、知的障害向けのヘルパーのアルバイトをしていて、そちらの方ならではのコミュニケーションに早く慣れたいです。健常者とは異なり、言葉でなく身体言語を介したすコミュニケーションが多そうです。自分で発明され皆んなの挨拶言語を見ながら、アトリエひこの創設者ひこくんを思い出しました。

知り合いでも、知らない人でも、誰かがアトリエの部屋に入ると、ひこくんは手元のキャンバスに描くのを一時止め、右手を相手へ伸ばし、元気よく親指を立てます。こうした光景を初めて見た時に、頭が真っ白になり、どう対応すればいいのか分かりませんでした。一応ひこくんの挨拶をまねて、私も右手の親指をひこくんへ向けました。ところが、これで終了しないで、ひこくんはもっと私の側へ親指を伸ばして、愛想よく親指同士を引っ付けました。

日本では、うなずいたり、 腰を折り曲げたりする挨拶をよく見かけます。しかも、身体を曲げる角度によって、相手への尊敬する程度が違うことがあります。平等な社会地位を示す握手やハグなどの西洋諸国における挨拶と比べると、日本らしい挨拶のやり取りは、人間の距離を感じられます。それに対して、親指同士をタッチをする挨拶はちょっとおかしみと親密さを感じられるのではないでしょうか。

現代社会におけるビジネスの場面で、絆の結びを表すように、握手がしょっちゅうされています。相手の声が聴きにくい場面で、手を挙げ、招き猫のように相手へ振ることも挨拶に役立ちます。それに対して、ひこくんならではの親指挨拶は、どんな場面でも、より柔軟に使えるのではないでしょうか。

ただ親指を立ていて、「初めまして、よろしくお願いします。」「今日はいい天気ですね。」、「楽しい時間をお過ごしください。」、「ようこそ。」、「今日元気ですよ、あなたは?」、「みんなで、楽しむことにしよう。」、「私はそれが好きです。あなたは?」などの豊かな情感は、言葉を使わなくても、相手へ伝えることができます。相手から同じ親指挨拶をもらい、二人の親指が触れあえば、「こちらこそ、よろしくお願いします。」、「いい天気ですね。」、「楽しい時間をお過ごしましょう。」、「よかった、私も好きですよ。」「そうですね。」とコミュニケーションが成立します。

知的障害を持っている方はコミュニケーションが理解できないと聞きましたが、相手とコミュニケーションする意欲を否定するわけではありません。彼らがオリジナルに編み出した身体言語が、私たちの形骸化したコミュニケーションにもっと面白さを与えるかも知れません。さあ、試しに、親指を立ち上げ、親しい人に挨拶しましょうか。

By Jude Jiang

Jude Jiang is a bilingual writer based in China. She has a strong interest in bridging the understanding between western and eastern worlds through storytelling.

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