(日本語 編集協力: 石﨑史子)
石﨑さんからお借りした春菜さんの詩集「ハッピバスケチューユ」をご拝読していると、彼女の言葉を操る巧さには驚いた。鬼、天国、大阪プロレス、山登り、温泉、誕生日をスローガン、歌、詩、手紙に書かれる日常に使われる言葉でも、外国人としての私にも力を与えてくれる。ありがとうね、春菜さん!
楽しそうに書かれたものの中で、一つの詩に目を引かれた。
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メール
意味ゆめ。
ありへん。
ぐだらね。
まだ怒っています。
絶対に許しません。
無理です。
泣いても、先生が悪いやろう。
なんでメールしないの。
なぁ、先生。
次メールしないとあれやで。
わかってるか。
本気行くで。
泣くまで許しません。
こんじょう出しても無理です。
スローガンはいらん。
あれ メールは
してな。
最後までづつけてやってや。
あきらめたらあかんで。
また、おこってほしいわけ。
***
春菜さんが親しい人からコミュニケーションを望んでいたのも感じられ、強い感情を表したことが分かる。ただ怒りの感情とは言えないかもしれない。「泣くまで許しません」というフレーズを読むと、幼い頃の喧嘩を思い出す。相手が何度も謝っても、自分は許さないふりで相手からもっと反応して欲しいというイメージが出てくるのだ。詩の中にもそういういたずらの感情が含まれるのではないか。
この詩を二回も読むと、うらやむべき率直さを感じられる。できるなら、自分で言いたいことを直接に言うという率直さをお借りしたい。大人としての私たちは、慎重になりすぎ、生きているのかもしれない。丁寧な振る舞いに溢れる社会で、ネガティブな感情を表すのは、恥ずかしいことなのか。何か嫌いなことがあったら、何か怒ったことがあったら、何か心を傷つけられったら、相手に「泣くまで許しません」と言いたい。そうすると、自分も相手もはっきりと分かるはずだ。
春菜さんの率直さは、四回目にアトリエひこを訪れたとき理解できた。その日は土曜日で、アトリエひこのメンバー人数は一番多かった。春菜さんは詩を作りながら、自分の悩み事を、皆さんと一緒にしゃべっていた。信頼してもらった私は、思いやりのある雰囲気に包まれ、傍でノートを取っていた。聞きながら、個人的な悩みを他人と話し合う春菜さんの姿に「勇気」を感じてならなかった。
「春菜さんには、秘密がありますか。」と私は興味深く尋ねた。
「ないです。」と春菜さんはきっぱりと答えた。
その時はわからなかった。今詩集を読んでいると、春菜さんのきっぱり答えた理由を考えずにいられない。秘密も、悩み事も、怒りなど心に浮かんだことを全部書いたからだろうか。では、春菜さん、詩集を読み続けさせていただきます。春菜さんの言葉の力をもらいたい!